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第22回【IFRS解説】確定給付制度

投稿者:澤村 喜久男2011年2月 7日カテゴリ:IFRS解説 | 会計トピック | 勉強会

 第22回の【IFRS解説】シリーズとして、2010年4月29日に公表された公開草案「確定給付制度」(IAS19の修正提案) のポイントを取り上げます。ここでは、確定給付制度債務 (資産) の変動の即時認識、新しい表示アプローチ、開示の改善 (感応度分析を含む:今回は割愛させていただきます。) 等が提案されており、特にいわゆるコリドー方式が廃止される点で、注目されている方も多いと思います。

 なお、このEDに対するコメント受付期間は既に終了しており、2011年半ばに最終基準の公表が予定されています。また、 本文中、意見にわたる部分は私見であることを予め申し添えます。

1. 遅延認識の廃止

 現行のIAS19では、数理計算上の差異について、期首の給付建債務の現在価値の10%又は制度資産の公正価値の10%のいずれか大きい方の範囲 (コリドー) を超えた場合に、従業員の予想平均残存勤務期間で定額償却する、いわゆるコリドー方式が認められており、多くの企業がこの方法を採用していると認識しております。
 日本基準ではコリドー方式は認められていませんが、重要性基準により一定基準を超えた数理計算上の差異を一定期間で償却する遅延認識が行なわれています。
 EDでは、確定給付制度債務 (資産) の公正価値の変動について、すべてを発生時点に認識しなければならないとしており、数理計算上の差異の認識におけるコリドー方式及び遅延認識の廃止、ならびに過去勤務費用についても即時認識が提案されています。

 

2. 新しい表示アプローチ

 EDでは、即時認識される確定給付制度債務 (資産) の公正価値の変動について、①過去勤務費用を含む勤務費用部分を純損益に表示、②財務費用部分を財務費用の一部として純損益に表示、③再測定部分 (数理計算上の差異等) をその他の包括利益 (OCI=Other Comprehensive Income) に表示する、新しいアプローチを提案しています。これにより、現行のIAS19で認められている、数理計算上の差異の全額を純損益に即時認識する方法も廃止されることになります。(その後の議論で、直接純損益で認識する選択肢を残す方向で検討されているようです。)

 また、②財務費用について、確定給付負債 (資産) 純額に優良社債の割引率を乗じて求めることとされており、現行のIAS19では制度資産部分に期待運用収益率 (通常割引率より大きい) が用いられておりますので、(表示だけの問題ではなく) 一般的に利益が減少することが予想されます。

 

現行IAS19 確定給付負債×割引率-年金資産×期待運用収益率
フェーズ2 ED 確定給付負債純額×割引率=確定給付負債×割引率-年金資産×割引率

 

 ここまでの内容を踏まえて、一般的に退職給付会計による純損益への影響は縮小し、包括利益及び純資産の振れ幅は大きくなるものと考えております。ただし、包括利益が最終損益のスタンダードになるであろう前提では、年金の運用状況という経営上回避が困難な事象も含めて、財務諸表利用者の目にさらされることになるものと認識しております。

 なお、2010年3月18日に公表された日本版ED「退職給付に関する会計基準(案)」(企業会計基準公開草案39) は、ステップ1として貸借対照表上のみ遅延認識を廃止 (OCI処理) する内容となっており、上記IFRS版ED、或いは「包括利益の表示に関する会計基準」(企業会計基準25:個別への包括利益の導入を一旦見送り) 等との関係から、日本版EDの内容のとおり基準化されるか、今後の動きに注目しているところです。

 

コンサルタント/公認内部監査人・内部統制評価指導士  澤村 喜久男

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