第16回【IFRS解説】収益認識(IAS第18号)
第16回の【IFRS解説】シリーズは、「収益認識(IAS第18号)」です。ここでは「物品の販売」「サービスの提供」「利息・ロイヤリティ・配当」に大別して、主要論点である認識の要件・測定をはじめ、収益に関する基準が包括的に定められており、詳細は本文中に記載しますが、収益認識に関する包括的な基準のない日本でIFRSを適用する場合に、多くの業種・取引において極めて重要な影響が生じるケースが考えられます。
なお、IFRSではこの他に、建物等の工事契約について工事進行基準を定めた「工事契約(IAS第11号)」がありますが、こちらの詳細については今後(国際会計基準審議会(IASB)と米国財務会計基準審議会(FASB)の共同プロジェクトが進んだ段階で)取り上げることとし、今回は現時点のIAS第18号の概要を取り上げて、日本基準との差異や対応を検討したいと思います。
また、特に基準全般を指したい場合を除き、意識して「IFRSs」表記は行っていないこと、ならびに本文中、意見にわたる部分は私見であることを予め申し添えます。
1. 収益の定義
IAS第18号では、収益は「持分参加者からの拠出に関連するもの以外で、持分の増加をもたらす一定期間中の企業の通常の活動過程で生ずる 経済的便益の総流入」としています。
「通常の活動過程で生ずる」は、基準のタイトルが 【revenue】 であるとおり、広義の収益(income:revenue と gainを含む)のうち、狭義の収益(revenue)を指しており、反復的・経常的な取引を対象としていると解されます。また、「経済的便益」については、企業が自己の計算により受領した又は受領可能な経済的便益に限定されており、第三者のために回収した金額が含まれない点に注意が必要です。
これに関連して、収益認識の議論としてしばしば取り上げられるのが、いわゆる商社的取引における売上のGross/Netの問題で、先ごろ公表された「我が国の収益認識に関する研究報告(中間報告)」においても、商社の会計慣行として顧客との取引の対価を総額で売上計上することがあり、日本の会計基準では明示されていないものの、契約上代理人として行われる取引については、手数料のみを収益として表示することが適切とされています。
つまり、日本でも本来は純額表示が適切な取引においても、明文化された基準がないために総額表示されてきた実務慣行があり、例えば商社・百貨店・不動産賃貸業(転貸)等の会社がIFRSを適用した場合に、売上金額が大きく減少するケースが想定されますので、取引を慎重に検討する必要があると考えられます。
2. 収益認識基準(概論)
1.を定義した上で、IAS第18号では収益を獲得するための取引を「(1)物品の販売」「(2)サービスの提供」「(3)利息・ロイヤリティ・配当」に区分し、それぞれについて収益を認識するための要件を定めています。
| 要 件 | (1)物品の 販売 |
(2)サービス の提供 |
(3)利息・ ロイヤリティ ・配当 |
|---|---|---|---|
| 経済的便益が流入する可能性が高い | ○ | ○ | ○ |
| 収益の額を信頼性をもって測定することができる | ○ | ○ | ○ |
| 物品の所有に伴う重要なリスクと経済価値が買手に移転している | ○ | - | - |
| 所有と通常結び付けられる程度の継続的な管理上の関与も有効な支配も保持していない | ○ | - | - |
| 原価を信頼性をもって測定することができる | ○ | ○ | - |
| 期末日の取引の進捗度を信頼性をもって測定することができる | - | ○ | - |
今回はこのうち(1)と(2)について、後の章で取り上げたいと思います。(3)については、上記の2つの要件を満たした場合に、実効金利法(利息)や発生基準(ロイヤリティ)等に従って収益を認識するとされています。
なお、IFRSではIAS第18号の他に、冒頭で記載した「工事契約(IAS第11号)」、解釈指針として「収益:広告サービスにおける交換取引(SIC31)」等がありますが、直接的に収益に関連する基準はこれらを含めて10にも満たない状況であり、産業ごとに100 以上のガイダンスを提供する米国基準と比較して、原則主義といわれる所以であると考えられます。









































